Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

一言も口が利けず、涙も出ず、そのため胸が切なさで硬直し伸子は気を失いそうになった。彼女は眼を瞑りよろめいた。佃はあわてて彼女を支え、横わらせた。

佃は官能の嵐で、伸子の心を引きさらい、また自分の中へ取り戻そうとするようであった。伸子は初め拒絶した。が、終りに、烈しく泣きつつ自分から荒々しい悲しみで彼の抱擁の下に身を投げた。彼女は自らを傷ける底知れぬ苦しさと、動乱する官能の火花との間に漂いながら、最後という字が、大きく大きく物を云いそうに、自分たち悲しき男女の体の上に書かれているのを知った。

翌日、佃は勤めに出なかった。

「私は、Kへ出かける時、来週まで欠勤届を出して置いたのです。三日かかったら、どっちかに決定すると思ったから」

伸子は、夫が今度は全力的なのを感じた。全力を出したら彼女を思い返させ得るという確信の下に。

それは、一種の監禁であった。その日は曇って蒸し暑かったが、障子を閉めきり、狭い本箱の前の畳の上に膝をつき合せて、一日中対座した。食事の時だけ立った。その食事も、伸子は止むなく坐らされ、よく一人で考えていた隅で所詮は一つの返答を捏ね廻している間に、佃が自分で用意するのであった。