Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
いま、何刻だとおもう」
「では、今すぐ行く」
左右太は、店の方へまわって、そこの土間から、二人より先に外へ出た。そして、礼もいわず、すたすたと役宅の裏門へはいって行く姿を見て、
「あんな男じゃなかったが、近頃どうかしているな」
と、市川義平太は、辰三をかえりみていった。辰三も、小首をかしげて、
「ヘンですなあ?」と、つぶやき――
「いくら、恋は熱病だといっても、まだお役宅も退けぬ時刻に……そして昼酒をのんでいるなんて、穏やかじゃありません」
「なにか、自暴自棄のような、ふうも見えるが」
「もっとも、この間うちから、しきりに、町の非難をかりて、暗に、お奉行を誹謗したりしていましたからね。何か、不平がたまっているんでしょう」
「では、そんな陰口が、越前守様のお耳にでもはいったのではないか」
ふたりが、元の同心部屋へもどってくると、他の同僚たちも、声をひそめて、何か、左右太のうわさをしていた。
するとまもなく、当の山本左右太が、ここへ姿をあらわした。――顔色がかわっている。人々は、かれが越前守の室へよばれて、何かいわれたな、と直感した。
あんのじょう、左右太は、ここへ来ると、噛んではき出すように、すぐいった。