Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme

Aozora Bunko

江戸の蝙蝠

すると、それで知ったか、すぐ翌る日、お袖もここへ尋ねて来た。

「お袖、こんな句があったじゃねえか。――お手討の夫婦なりしを衣更え。……どうだ、いっそこのまま、夫婦になろうか」

「ふ、ふ、ふ……」お袖は、紅皿を持ちながら、唇を反らして、鏡の中で笑っていた。

「なにを笑うんだ」

不伝は、浴衣がけの体を、寝そべらして、頬づきながら、女の化粧をながめていた。

「だって。お燕がいれば、お燕を口説くし、あれがいなくなると、私だなんて。あほらしくって」

「いや、真面目にさ。こう見ていると、どうして、其女もなかなか捨て難い」

「やめておくれ。こう見えても、お燕をあの年まで育てて来たきょうの日まで、男に目をくれたことはない私なんだから」

「へえ……」と、嘲い返して、

「化物刑部は、おめえの、旦那だったのとは、ちがうか」

「男のはなしをしてるんでしょ。あんな獣を、私あ、男とも何とも思って来たわけじゃないもの」

「じゃあ。その前の、大岡市十郎ってなあ、どうなんだい」

「うるさいね」

「うるさかねえさ。男ぎらいだなんていうからつい訊きたくなるんだ」

「知らないよ!」

お袖の眉が、鏡の中で、ぴくとうごいた。