Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
咲き変った女
二棟の土蔵がある。一ツの土蔵口の大格子から、かすかな灯影が――灯影と意識しなければ気づかれないほどの薄明りが――ゆらゆら外へさしている。
幼い者の泣き声は、そこから聞えてくるものだった。お燕にちがいない。その泣き声は、直ちに、肉親の血を搏ッてくる。父なる人間の良心を責めてやまない。市十郎は狂おしい影をさまよわせ、またたびに酔える猫のように外へ出て行った。そして、土蔵格子へ顔を押しつけた。
咲き変った女
「――誰? どなた?」
土蔵二階から女の声がとがめた。
階下の重い欅扉が、少しずつ、ガラ、ガラと開くような物音がしたのに、そのまま上がって来る者もない不気味な気配に、お袖は、添乳していたお燕の寝顔をそっと離して――
「たれなの?」
と、白い胸肌をつくろいながら、身をもたげて、今度は暗い梯子の穴へ、覗きこむように、もいちどいった。
「おっ。お袖っ……」
谺のような声が返った。次の跫音も、度外れに大きかった。お袖は、のけ反るように面をそむけ、全身は一瞬に白い戦慄だけを見せて、丸く屈まりこんだ。
――茫然と、そこに立ち、涙をたれたまま、市十郎は暫く大きな呼吸をなだめていた。