Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme

Aozora Bunko

こころの壁

「越前も、もっともな事と、恐縮いたしております」

「いや、よろしい。町奉行は、人気商売とはちがう。思うようにやってみい」

「おことば、百万人力にぞんじまする」

話は、そんなものだった。吉宗は、もう越前の職にはふれず、茶をのむかとたずね、のみますと彼が答えると、助八に命じて、茶坊主をよび、薄茶を与えた。

「ときに越前。堺町はこの頃、どんな賑わいじゃな。知らぬか」

「はい」と、越前は、突然、何かに打ち挫がれたようなものを背におぼえながら――「まだ、町奉行の職にも、甚だ、馴れませぬ故、つい近頃の堺町を見ておりませぬ」と、答えた。

吉宗は、わらって、

「折には、見てあるけよ」

と、軽くいった。

こころの壁

越前は、お庭を辞して、下城の途々も、(折には、見てあるけよ)といった吉宗のことばの真意を、考えさせられた。

おもい出すだに、彼は、体の組織がすぐ変るような気がした。その頃の実感を、また自分を、今の身によびもどした。

あられ降る飢餓の町のさまよいを――あの堺の抜け裏の雑鬧を、おもい出した。

味噌久の背に、お燕を負わせ、木賃を出ては、巷に、食物をひろいあるいた日を、瞼に、えがいた。