Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
「なんじゃ。知れぬと……」
「おいいつけを果たさず、立ち帰っては、お叱りをうけようかとも惧れましたが、実は、ふしぎな事にぶつかりましたため、一応、御判断を仰いだ上でも遅くないと存じまして」
勘蔵は、何もいい得ない義平太に代って、人違いした怪しげな人物のことを――また、駕籠だけは、まちがいなく、楽翁の駕籠だったことを――ありのまま、話した。
だが、これは、越前守の判断にも及ばないとみえ、かれも眉を沈めて、ただ聞き入るのほかはなかった。
「解せぬことよの……」しきりに、つぶやいて、
「もう一度、話してみい」
と、かれは更に、慎重になって、耳をかたむけた。
「――あ。そうでした。申し忘れましたが、義平太が、その武家の姓名をたずねましたところ、姓は藪、名は八。姓と名とで、藪八と申す者であるなどと……まるで人を愚弄するような言を吐いて立ち去りました。世の中に、左様なふざけた姓名はないとは存じましたものの、さりとて、その人間には、どこか謹直な風も見られ、それ以上、故なく嫌疑をかけることもならず、ぜひなく立ち別れましたような次第でござりました」
藪八――という名が出たとき、越前守の面には、あきらかに、ぎょっとしたような、心の一波が、かすめて通った。