Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
狂蝶譜
「当別院のうちに、大内不伝が女を隠しておると聞き、その女に、用があって参ったのでござる」
「その女なれば、もうここにはおりません。……実は、われわれどもへまで、御嫌疑がかかっては迷惑と思い、ただ今、院中の者を呼び集めて、自発的に取質しましたところが」
「それは御好意」
「先頃、不忍池の蓮見茶屋の株を買い求め、不伝どのには、その女を、そこへ住まわせておるとか申す者がございます」
「蓮見茶屋とな。……なるほど。では、そこの女将にでもしているのか」
「いえ。女将か、どうかは、分りませぬが」
「場所は」
「中の島の弁天堂の側。そこには、一軒しかないそうで」
「いや、かたじけない。では、そこへ参ってみよう。采女、来い」
彼は急ぎ足で、寛永寺の門を出た。
途中、連れの采女をかえりみて、
「母に会っても、わしが、何か申すまでは、ひかえておれよ。不伝を見ても、同様に」
と、いいふくめた。
池の端から弁天島の灯のそよぎは、夕方からの夏景色だが、まだ陽が高いし、蓮の花にも、早かった。
「この家だな」
それらしい門をのぞいて、
「部屋はあるか」
「さ。どうぞこちらへ」
蓮見茶屋の女は、心得顔に、二人をいちばん奥の、池に臨んでいる小部屋へ通した。