Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
怒るとも泣くともつかない眼であった。そして、手の紅皿を無意識に、
「畜生。こうしてやるから、見ておいで」
と、庭石へ投げつけた。
紅と白の砕片が、粉になって、発矢と飛んだ。不伝は、刎ね起きて、
「お、おい。どこへ行くんだ?」
と、かの女の狂的な姿を、呆ッ気にとられて、次の間へ、見送った。
「大きに、お世話」
お袖は、箪笥のひきだしを、がたがたいわせていた。夕化粧して、紺の風通織の単衣を着、一本の団扇を持つと、かの女は、毎夜のように、どこかへぶらりと出て行った。
男があるな。――と、不伝は気をまわした。それまでは、お燕がかれの目標だったが、急に、嫉妬が出てくると、お袖にもまだ捨て難い年増の魅力があると思い初めた。
「こう。どこへ行くんだ、どこへ。……また出かけるのか」
「だって、こう暑いのに、家にいても、退屈ですもの」
「他人の世話になりながら、退屈はおそれ入るな。おめえみたいな吾儘者は見たことがねえ。おれを、刑部とまちがえちゃ困るぜ」
――お袖はもう仄暗い門口にいなかった。
「そうだ」と、不伝は遽かに、腰をあげて、裏口から草履をつッかけた。どこへ行くのか、あとを尾けて、お袖のきいたふうな口を、封じてやろうと考えたのである。