Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme

Aozora Bunko

――右様のことは、慥と覚えておるかの。袖……」

「…………」

「どうじゃ、相違の箇所があらば申せ」

「…………」

お袖は、何かいおうとした。しかし、声が出ない。意志がまとまらない。

かの女が、必死にいおうとすることは、そんな質問の答えではないのだ。日頃から――いや十何年間も、思いつめてきた無情な男への復讐を、今こそいわずにおくものかと――心のうちで思い燃えているのであった。

――にも関らず、体じゅうを血の音ばかり駈けめぐって、頭はいたみ、手足の先は冷え、髪はそそけ立って、何一ついい出せなかった。

こうして、その憎い男と、上下にむかい合って坐りながら、お袖はまだ、その男の姿をすら、顔を上げて見ることができないのである。

だが、越前守の声は耳にはいってくる。その声こそ、以前の市十郎の声ではないか。白々しい偽善者、皮をかぶった嘘つき、何が奉行だ、奉行面がどこにある、畜生っ――と彼女は耳の鼓膜の入口に、全身の憎しみをこぞってその声と闘っていた。石のような無言は、反抗の標榜だった。もちろん、奉行のいう言葉の意味などは、心の堤防をかためて、一滴でも、内へ入れようとはしていない。