Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
……堪るものではない。どっと、重うなってしまわれた」
「ば、ばかな……女ではある」
眼には、涙をもちながら、越前守は、吐き出すように呟いた。
楽翁は、さっと、顔いろを変えた。この老人は、すぐこうなるのである。
「あいや、お奉行。ばかとは、お言葉とも思えぬ。ばかでしょうか、奥方の心事は」
「あわれむべき、おろかさです。女ほど不愍なものはござりませぬ」
「不愍はよいが、愚かとは、どういうわけじゃ。良人の大難を想い、身の病もわすれて、神に祈る心根を」
「ですから、愚かというのです。神に祈って、何になりましょう。なぜ、園子や子等のために、薬餌をとって、温かに眠り、身を安楽にしていてくれないかと」
「良人たるお奉行が、今日、苦熱の釜の中で煮られるような立場にあるのに、妻として、安閑としていられないのは当然じゃ。女の力の及ばぬ世界のことだけに」
「でも、私は、一切の前非と、後々の事までを、妻にだけは、隠すことなく話してあるのです。たとえば、お袖という一女性のことまでも」
「なお悪い。なおさら苦悩するのは女の常じゃ。そしてあなたは家庭にもお帰りがない。成程、お奉行としては、立派だろうが、一体、それでよいのかな。