Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
怪異を待つ娘心
最初は恐ろしさで一杯、夜が明けたら、早速父親に話して、何んとかして貰う積りでしたが、明るい陽の光の下で考えると恐ろしさは霧の如く消えてしまって、妙にやるせない物足らない心持だけが残るのでした。
そして藤色の大振袖、精巧の袴――と言った、歌舞伎芝居へ出て来るような時代めかしい身扮や、政信の絵から抜け出したような、涼しい眼、豊かな頬、紅の唇の幻影が、次第になつかしいものにさえ変って行きます。
財産自慢や学問武芸自慢の男達に比べて、それは又何んという距りでしょう。二枚折の蔭から片手を突いて、たしなみ深く差しのぞく優しい物腰し、物言いの古めかしい上品さ。
――そんな事を考えて居るうちに、桜子は、約束した今宵が待たれるような心持にさえなり切って居りました。
怪異を待つ娘心
四方が暗くなると、さすがに不気味さが蘇えります。
そして狐狸とも妖怪とも、素姓の知れない若衆を待つ心持になった自分が犇々と浅ましくなりますが、それかと言って、今更一埓を人に打ち明ける気にもなりません。
不思議な力に引き摺られて行く、娘心の神秘とでも言いましょうか、焦躁と不安と、恐怖と期待とのうちに、その夜も次第に更けて行きます。