Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
しかしながら器用人というものは何といっても本当の仕事が出来ないのが弱味です。商売にならないのも無理はありません。芸術家の心だけを多少持っているところがかえって不幸の種かも知れません。
私の知人M君もこの万さんの一人でありまして、初午の絵行灯に雁次郎の似顔でも描かせばなかなか稚気愛すべきものを描きます。ところでM君も徳川末期あたりに生まれていればまず一日を床屋で暮していても、町内を走り廻っていても、この世だけは無事に暮せたのでしょうけれども、この現代はあまりに生活が深酷過ぎますので堪りません。彼には妻子があるのですから、なかなかええ人やという評判くらいでは食っては行けないのです。M君は止むを得ず保険会社の勧誘員を勤めました。ところがちょっと絵心でもあるくらいのM君ですから、やはり芸術家の潔癖な心得だけは、心の片隅に持っていますから、勧めたくもない保険など他人へ強いてみたりする下等な行いはいかにも出来難いのでありました。M君はある時私なら馴染でもあるし話やすいと思ってか、勧誘にやって来ました。私はM君には気の毒と思いましたが、大体私は何年か後の金千円という金に興味など少しも持てないのだから厭だといって断りました。