Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.671 Zeichen · 252 Bildschirme
「大層な品ですね、丹波様は書をなさいますか」
「いや、書という程では無いが、兎角手習が好きで、剣術へ精の出ないのが、私の悪いところだそうで――」
丹波彌八郎は苦笑いするのです。成程、八五郎に手もなく取って押えられるようなことでは、何百石の禄をヌケヌケと食んでは居られません。
「お読みになって居るのは?」
「恥かしいが源氏だよ」
この頃の文字のある人が、今日で考えるよりは、遥かに多く、日本の古典を勉強し、それをまた、大した自慢ともしていなかったのです。丹波彌八郎文弱に流れ、勘当されて恋文ばかり書いて居たと言われるのは、こう言った好みのせいかもわからなかったのです。
「この硯や墨では、怖くて私が拝借も出来ません。他にザラ使いの品はございませんか」
「硯や墨にザラ使いも他所行も無いよ」
彌八郎は平次の愚かさを憐むように笑うのです。だが、それは声の無い、極り悪そうな笑いでした。
腰抜け腰抜けと言い囃されて居りますが、こう話して来ると、決してイヤな男ではなく、反対にその弱々しさのうちには、何んとなく高貴な感情の持主らしい、人ざわりのデリケートなところがあって、平次などには反って親しい感じを持たせます。