Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.671 Zeichen · 252 Bildschirme

Aozora Bunko

四

「もうよい、帰れ」

「ハイ」

静かに立ち去るお春の後ろ姿、やがて娘になろうとする、香わしい柔らかい線の美しさも、富山七之助の眼に入る筈もありません。命から二番目の一刀――来国俊を侮辱された憤懣の黒雲が、若い七之助の胸一杯に鬱積して、最早最後の分別も無くなった様子です。

四

それから三日目、二人の用心捧の対立は一ペンに破局へ押し上げられてしまいました。

剣の富山七之助は、廊下の突き当りを右へ曲って、いつもの用便所に入りましたが、両刀はその頃の習慣で、雪隠の前に用意してある刀架に任せて置くのですが、何やら胸騒ぎがしたものか、刀架けには長い方の来国俊ひと腰だけを任せ、短い方は手に提げたまま便所の中に入ってしまったのです。

朝の辰刻半(九時)そこそこ、桜はようやく満開で、江戸の春はまことに快適そのものでした。便所の格子窓からその花を眺めていると春の小鳥の囀りも聴えます。

やがて外へ出て来た富山七之助、小刀を腰に差して、心静かに手を洗い了ると、フト後ろを振り返りました。

「アッ」

刀架けに預けて置いた、命から二番目の来国俊が見えないのです。

縁側は見通し、庭も広々として、満開の桜の外には、まだ萌え初めぬ草地にさす影もありません。