Japanische Klassiker mit Furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Lesen Sie ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.351 Zeichen · 213 Bildschirme
船長はうなずきながら聞いていたが、すぐにボーイにコーヒーかんなどを持って来させ、手ずから紙で包んだ。
夏陽にやけた船腹にある船長室は蒸し風呂のように暑かった。輸入食糧を荷揚げする音が単調にガラガラガラとひびいている。老船長のゴムまりのように肥った体からも髪のうすくなった頭からも汗がしきりに蒸発している。船長は私にあてた手紙のタイプを終わった。
「これを病める友へ」
あの夏の日から三か月たった。ディール船長は米国に帰っているのだろう。私は毎朝、お告げの鐘と共に目をあけて祈りをする。五時半だ。それから聖書を拝読する。そのうちにタオルと一ぱいのコーヒーが枕もとに運ばれる。これは弟に作ってもらうのである。いい香りにまず一日の生きる喜びが生まれてくる。ひと口いただいて神のお恵みを知る。ふた口目にディール船長を思う。三口すすってキリストにおいて人類は一致すという言葉を実感する。コップを飲み干すころ、心臓の鼓動が安らかに正しくなってくるのがわかる。しばらく目をつむっていると、疲れはすっかり消えて、新しい力が指先にまでみなぎってくる。そこで私はごろりと寝がえりをうち、腹ばいになって、鉛筆を手にとり、昨夜書きかけて電灯が消え、そのままになっている草稿の文章の下へ次の字を書き始めるのである。