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Japanische Klassiker mit Furigana

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ロザリオのくさり

ロザリオの鎖

永井 隆

Lesen Sie ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.351 Zeichen · 213 Bildschirme

Aozora Bunko

──しかしそこには二人の待っていた姿はなかった。

誠一の手から、せみが鳴きながら飛んでいった。そのとき以来、この二人の子供は「お母さん」という言葉を口にしない……

不幸な者は、いつかその不幸に慣れて不幸を感じなくなる。三人さみしく、大声を出すこともなく暮らし慣れて、世の中はこのようなものとカヤノも幼な心に思いこんでいたらしい。そこへ幸福な弟一家が乗り込んできた。

「オカアチャン」「オカアチャン」

小さい女の子が口をひらけば母を呼ぶ。呼ばれれば母親は「ハアイ」と答える。

「オカアチャン」と小さい子が一声呼べば、カヤノの小さな胸に針が一本打ちこまれる。「ハアイ」と母親が答えるたびに一本の針がカヤノの小さな胸に打ちこまれる。母と子は絶えまなしにカヤノの胸に痛い針を打ちこんでいる。打ちこんでおりながら、それと気づかず、やっぱり無邪気にオカアチャン──ハアイとやっている。

夕方、眠りからさめた小さい女の子が、そばに母親の姿が見えぬので、

「オカアチャンは?」

とカヤノにたずねた。カヤノはうっかり、

「オカアチャンはね、──天国」

と自分の母を答えた。

そこへ母親が台所から出てきた。