Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
泥や何か、本に書いてある通りにしたんだけれど」
保は十四歳であった。彼は冬じゅう、この箱を縁側に持ちこんで火鉢を入れたり、硝子の蓋をしたりして、発芽を楽しんでいたのであった。
思いがけず相手ができたので、保は盛にシクラメン培養のむずかしさを説明しはじめた。これは生えても数年後でなければ花を持たないこと、温度と湿度の調節が蘭栽培に劣らず困難なこと。彼は、暇さえあると抱えて歩いている園芸の本からよくも覚えこんだ知識を、雄弁に、しかし、ところどころで子供らしくごちゃごちゃにしながら話すのだ。
「ね、だから温室なしじゃあできないのあたりまえさ。――こないだなんか僕の知らないうち、犬が足を突っ込んで、根こぎにしたりするんだもの」
伸子は愛情から、短い受け答えをした。けれども、正直に云うと、伸子は保の云うことを、半分も聴きしめてはいないのであった。彼女の心持は朝から均衡を失っていた。注意が散漫になって苦しいので、部屋を出てきたのであったが、三月下旬の庭の生動する雰囲気のうちでは、かえって彼女の内にわだかまっている重い、激しい、同時に懶い心持がつのるようだ。
伸子は、離れを、ぐるりと風呂場の裏へ廻った。