Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
五
「一昨夜、血液の混った痰が出たと云うので大層気にしております。何卒一度御来診下さい」
彼女は、
「とよ」
と呼んだ。
「これを、明日の朝九時に学校へ届けて御返事をいただいて来て頂戴、間違いなくよ」
津山は佃と同じ学校の校医であった。
翌朝早いと思って、伸子もその夜は早寝にした。佃はいい工合に熟睡して、伸子が入って行ったのも知らず、かすかに鼾をかいていた。
横になって見ると、伸子は、自分が極めて平静なつもりにも拘らず、底では亢奮しているのを知った。夫を落胆させまい心持があったと見え、何だか病気もわからなそうに云ったが、伸子はそれがコンサムプションであろうことは殆ど疑いなかった。彼が二十代に痔瘻を患ったことのあるのを聞いていた。始終腸に苦情があった。彼の生国は県別にして一番、そういう患者の多数なところであった。しかし、そう激烈ではなさそうだし、彼はもう四十になっているのだから急変はあるまい。断片的な知識で、伸子は大体の結論をつけた。
それにしても、なぜ自分がこのことを突然の不幸と感じないのだろうか。伸子は怪しんだ。暗闇に横わり、こうして彼の寝息を聴いている。