Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

どこの電話か、受話機を握っている手のひらの感触と、送話口の光ったニッケルだけが、はっきり見えている。そばに、そこの女中が縞の着物を着て立っている。自分は無智な女中に、佃が血を出したと云うのをきかれるのがいやで、送話口へのび上り、懸命に、

「佃が blood を出しました」

と云った。

それぎりで目が醒めた。醒めた後までも、その blood と気をつけて発音した舌の感じが、変に現実的に残っていて、伸子は悲しい心持がした。

津山は一時前に見えた。佃は細かに、容態を説明した。すっかり医師と患者という態度であった。

「それは御心配でしょう。しかし、長い時間にわたって声を出す職業――お互のようにね――よくやられますよ。結核でなくとも。それに何です、X光線ででも見れば、十人のうち七八人までは痕跡を持っているものですからな。つまり無意識の中にかかって、無意識の中に治ってしまっているのです。人間はこれで、なかなかうまくできていますよ」

彼は、血色のよい、しかし神経質らしい手つきで、聴診器を出した。

「どれ――ちょっと拝見しましょうか」

佃は本気な顔つきで、シャツを脱いで胸部を出した。