Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「さあ――多分そうだろうとは思うんだが」
夫のために、足袋や何か揃えさせながら、伸子は、頭の中でこれから自分たちの行きそうなところを方々さがした。
「ね、頭字だけ云って、当てるから」
「行けば判りますよ」
こんなことは、彼らが結婚して以来、初めてのことであった。佃は興にのることなど、楽しい不意打ちであいてを悦ばせる計画をするということなどない人であった。よそへ行っても、予定の時間に帰ることを忘れない人が、珍しいことだ。
彼らは近所から電車に乗った。
「――本郷……肴町。二枚」
肴町……。伸子は、佃の隣りに腰かけ、眼をしばたたくようにして考えた。彼らの交友範囲は狭かった。二人で訪ねて行くところなど、決して思い出せないほどはない。肴町――伸子は覚えず、
「ああ、わかった」
と、口に出した。
「わかってよ」
佃は、正面を向き、外套の下で腕組みしたまま訊きかえした。
「どこ?」
「でも、やっぱり確かじゃあないわね……阪部さんかと思ったんだけれど……東京に来ていらっしゃるんでしょう、あの方、今――どっか――大学正門あたりなんじゃあなかったかしら、宿が……」
佃は、どっちにでも取れるように笑った。