Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

「じゃあそうしてお置きなさい」

阪部は、地方の大学に植物学の教鞭をとっている彼らの親しい友人の一人であった。上京すれば会わないことのない間柄であった。

案の定、佃は、大学正門前へ来ると立ち上った。

「降りましょう」

そして、果物屋の横をまっすぐに入った。ある西洋料理店の前に、白服、白前垂に大きな料理帽をかぶった料理番が立って、ぼんやり彼らを眺めた。少し先の社の前に風船屋が出ていた。伸子は、穏やかな午後の往来を、複雑な心持で歩いた。夫婦とは、或は人間の生活とは、何と妙なものであろう。この間の晩あのように泣いた二人がこうして連れ立って歩く――前ぶれなしに、阪部訪問になど自分を連れ出す気になった夫の気持が、伸子には、ある思いやりを起させた。

本郷台を、小石川の方へ下る坂の右側に、御下宿、と書いた中古の看板をかけた門があった。佃はそこを入った。裾を端折って通りすがった女中に、彼は声をかけた。

「おいでですか、阪部君」

「はあ、どうぞお通り下さい」

女中は、伸子を観察しながら、スリッパアを二足揃えた。佃は、案内を待たず、どんどん自分で中庭をまわった廊下を進んだ。