Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
けれども、今夜はどうもはかどらない。必要な表現が、彼女の貧弱な語彙に無いからばかりでなかった。興味の湧くまで心を集注する熱が、何だか胸の辺で欠乏している。そういう感じであった。伸子は、考えるにも字を書こうにも、自分という全存在の影が、俄に薄くなりでもしたような手応えなさを、内部的に感じるのであった。淋しいと彼女はそうなった。
佃は紐育の北に在るある市にY・M・C・Aの用事で旅行中であった。
その話をきいた時、伸子はむしろ悦んで賛成した。
「結構だわ、行っていらっしゃい。たまには別々になるのもいいわ。気が変って――」
自分の心持を考えなおして見ることも、亢奮しがちな神経に休みを与えることも、よいと思ったのであった。最初の晩伸子は夕飯後、階下の広間へ自分を訪ねて来る者がない、という安らかさで、早くから部屋着にくつろいだ。気まかせに衣裳箪笥を片づけたり、読書したり、久しぶりの独居の楽しさは、魅するようであった。九時頃風呂に入って眠りにつく時、伸子は日頃忘れていたゆったりした無為の歓喜が、さし上る月のように我身を照すのを感じた。
次の日、即ち今日は一日暇な日であった。