Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
……ともあれ、わしの屋敷へ来い」
「…………」
市十郎は、答えなかった。――本心がさめてくれば来るほど、何で、皆に、合わせる顔があろう。生きておめおめ、実家へもどることができよう。そう責められるのみだった。
「死なせたがよい。望みどおりにしてやりなさい」
同苦坊はいった。それがむしろ、慈悲であると説いた。
主殿の考えは、そういわれると、敢なく崩れた。――連れ戻っても、果たして、忠右衛門や兵九郎の肉親たちが、自分に、同意してくれるかどうか、それは多分に疑わしい。
また、かれを、一族の囚人とし、もしまた、勃然と、反抗を起して、ふたたび従兄の亀次郎のあとを追うようなことでも起ったら、もう取り返しはつかない。
「……そうだ」
主殿はひとり期するところがあった。
「弟に代って、この不具の身を……」と、ふと思ったのである。
それには、市十郎のいう通り、大岡家の菩提寺へ行こう。祖先の前で、この身を捨て、さいごの一言をもって、この弟の心を、根柢から鍛え直してやろう。
そう決意したので、主殿は、同苦坊のことばに従った。同苦坊は、これも宿縁、自分も浄見寺まで同行して、一片の回向を送ろうといった。