Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
ようやく、左右太は、前後の記憶を、辿りはじめた。
お袖とお燕とが連れ立って、寺屋敷の門から出てゆくのを尾けて――鶯谷の橋の上までさしかかったとき――その刹那からの記憶がプツンと断れていた。
「そうだ。あのとき、ふいに、何者かが、自分のうしろから組みついて、いきなり喉ぶえを締めつけて来た。――たしか、相手は、三人ほどと覚えたが、不覚にも、そのまま自分は、昏倒したものとみえる」
――それから、どこへ運ばれて来たか。その間の径路は、まったく思い出せないのである。
しかし、山本左右太は、案外、うろたえもせず、絶望的な容子もない。
かれは、かりに自分の生命が、これきり終るとしても、もう使命の大半は果たしているという――安心と見とおしを抱いていた。
堀の茶漬屋で、船頭の源吉とお次に別れるとき、お次の手へ、
(これを奉行所の市川義平太か、小林勘蔵に、渡すように)
と托しておいた走り書の一通が、いまとなってみれば、天祐だった。外部との唯一の連絡となり、光明ともなっている。
あの一通には、堀の茶漬屋で探り得た――事件の伏在人物や、径路や、また、自分が単身で、化物刑部たちの巣へ、これから行くことも認めておいた。