Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
「ばか。市川楽翁は、貴様の、親だぞ。父親ではないか」
「公務の上では、父も子もない」
「お奉行のお立場はわかるが、その御苦境をお助け申さねばならん股肱のわれわれまでが、一途に、そんな純理にばかり走ってしまったらどうなるんだ。ま、落着けい」
「おれは落着いている。狂っているわけじゃない。法の正しさを守るためには、わが身も、裁かれ、わが子といえど、ゆるさぬとしているお奉行の胸をおもえば」
「まあいい。ひっこめ」
「退かん。おれは、役目を果たす」
振りほどいて、義平太は、たった今、ここを出たはずの、楽翁の駕籠を追って、裏門を走り出た。
数寄屋橋門内の夜は人通りも稀である。例の石焼豆腐の灯が見えるほか、その辺からお濠端へかけては、もう夏草の伸び初めている一めんな草原だった。
「待ッた。待ってくれ」
義平太は、追いついた駕籠の前へ廻って、両手をひろげた。
「南の与力でござるが、駕籠の内のお人に、ちとお質し申したい儀がある。ちょっと、降りていただきたい」
さすが、声のどこかに、ふるえが帯びる。
義平太はその慄えを叱咤して、自己の私心から、追い出すように、語気をはげまして、さらにいった。