Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme

Aozora Bunko

藪八

「……お出しなさいっ、楽翁どの。御所持の印籠をお渡しあればよし、さもなくば、やむを得ず、十手にかけて引立てますぞ」

――すると、駕籠の内から、

「なに、十手にかけてもだと。……おいおい人違いしては困る。いったい、誰にむかって、何を渡せといっておるのか」

かごの垂れを刎ねて、そこへ出て来た人影を見ると、父楽翁とおもいのほか、黒い夜露頭巾を被り、黒つむぎの袷に、袴もきちんと着け、年ごろ四十五、六の堅々しい感じの中に、どこか眼には鋭さのある武家だった。

「……あっ。こ、これは?」

人違いと知って、義平太は、自分の不覚に狼狽した。

藪八

さっき、二人の同僚に向っても、自分は、落着いている、決して、逆上してはいない――と広言したが、やはり心が錯乱していたのか。

――と。かれは、駕籠の棒先にさげてある提灯を見直したが、それは、市川家の紋の三ツ鱗だし、また、駕籠かきの顔を見れば、それも父が常に乗りつけている近所のかご屋――かご寅の若い者にちがいない。

「はてな。おかしい」

人違いには相違なかったが、駕籠違いでは決してない。

どうして、父楽翁の駕籠に、見知らぬ武家が、乗っているのか。