Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
蔭の者
蔭の者
初めは、つまみ出すつもりで来たものの、お袖も、お島と似たり寄ったりの、はぐれた女の生涯を歩いている。ふと、身につまされて、晩秋の女の末路を、眺めないではいられなかった。
――で、急に、やさしく、
「わかったよ、わかったよ。ネ……お島さん、お勘定はいいから、帰っておくれ。夕方になると、客商売で、断われないお客様も見えるんだから」
「いいじゃないか、まだ。……おまえさんの顔を見たら、気易くなったせいか、急に眠たくなった。寝かしといておくれ、すこしここで」
「こまるじゃないか、お島さん」
「困らないよ、私はちっとも。……花のお江戸も、私にとっちゃ、枯れ野の芒しか見えやしない。どうせもう、近いうちに、自訴して出るつもりでいるんだ。あわれと思ったら、今のうちに、飲ましておくれ。……ああ、のどが渇いた。冷酒でもう一本ほしい」
「あら、そんな所へ、寝てしまって。……ま、困った人だね」
「このまま、南町奉行所へ、かつぎ込んでおくれな。ね、後生だから」
「南町奉行所へだって」
「あ。自訴するなら、私あ南へ、駈けこむつもりさ。本望だものね」
なぜか、お袖は、むかっと顔いろをうごかして、急に、お島の手を抜けるほど引ッ張った。