Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
越前守は、彼女にたいして、大きな父の任務を、見出した。それは彼にとって、思いもうけぬ、よろこびと、張り合いだった。
十八というこの年頃まで、まったく、無智と、悪の仲間におかれて、ただ美しい栗鼠のごとく成長して来たこの野性の処女を、自分の真心で、父の愛情で、どこまで、女性としての教養と心性の美しさを与え得るか。
「そうだ、それはわしが、お袖にたいする謝罪でもある」
折々に、ここへ来ては、彼が熱心になり初めたのは、それからだった。教える彼も、習ぶ彼女も、うつつなほど、愛情に結ばれながら、わざと、仄ぐらい短檠を用い、机に、相対して、こよいも、更ける夜長を、忘れはてているのである。
お袖は、その夜の空のように、心にのこっていたかすかな曇りも、今は、きれいに拭い除った。とめどなく、涙はこぼれて、嗚咽を忍ぶのに切なかったが、それは決して、かつてのような、呪咀と悲嘆にしぼるものではない。自身にさえ甘やかな味のするうれし涙であった。また、今にして、男の真意を、拝みたいような、詫びたいような、涙であった。
「さ。……戻ろう。つい、知れては、お燕のためにも、お身のためにも、かえって、苦しいものがまた生れよう」