Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
と、眼で強いて、市十郎が、恐々、内ぶところから取出した物を、くるりと後ろ向きになって、入念に拡げて見ていた。
「よし、確かに、貰ったよ」
幾つかに折畳んである一片の図面だった。それを自分のふところ深くおさめてしまうと、阿能は、またニタニタ笑っていった。
「市の字。ゆうべの逃げッ振りはよかったなあ。あれで、もすこし度胸がつけば、おめえもそろそろ素人じゃあねえ」
「え。ゆうべの……?」
「よせやい、於市。もしやヘマをやりゃあしねえかと、救いに出ていた恩人を、お見それ申しちゃ困るじゃねえか。――赤城下でよ。すんでに、ふん捕まるところだったろうが」
「あっ――」おもわず出る驚きを顔いろのうちに抑えて、
「……で、では、あの時、うしろの方で、ふいに、兄へぶつかッて、兄を仆して行った人影は」
「オオ、おれさ。あんな事もあろうかと、夜毎、小普請屋敷の近辺を、見まわっていてよかったよ。……だが、あの男は、おめえの兄貴だったのか」
「夢中でしたが、二度ほど、背に浴びせられた大声が、どうやら兄の主殿のようでした」
「そいつア、しまった」
「えッ。しまったとは――な、なにかあの折」
「いいや」