Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
斑々たる獣の足跡
「エ、エ?」
「何も彼も存じて居ります、桜子様は私の来るのを、心待ちにお待ちでした」
怪しの若衆は畳ざわりも滑らかに、スルスルと差し寄って、思い乱るる桜子の膝の上へ、そっと手を置きました。
思いの外温かい手。
桜子はゾッとして身を狭めましたが、もう声を立てる気も、追い退ける気もありません。
「お話申しましょう、桜子様」
男にしては少し艶やか過ぎる顔が、近々と桜子を差しのぞきます。
斑々たる獣の足跡
三日目の晩、二人はもう隔てもなく打ち解けて居りました。
「お前の名は、何んと云うの?」
「綾麿」
「まあ、何んという古風な名でしょう」
桜子は可愛らしい掌を揉むように摺り合せて、自分の頬へ当てたりしました。
「家は?」
「ツイ其処」
「というと?」
「神田橋の下」
「まア」
何んと言う他愛の無さでしょう。神田橋の下には、汚なく濁った水と、冷たい石垣としか無いのに、桜子はそれを怪しむ気さえもう無くなっていたのです。
四日目の晩。
二人は火桶を囲んで、話したり笑ったり、双六をやったり、見合せをやったりして居りました。
五日目の晩は、床の上へ雛のように並んで坐って、肩と肩とをもたれ合せ乍ら、二人は真紅の紐で綾取りをして居たのです。