Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
四
そして、こわごわ眼を開けて見れば、そこに恐ろしそうに私を振り仰いで竦んでいるのは、やっぱり私の可愛い家内のお鹿の顔に相違ございません。
「そんな怖い顔をしないどいて! なぜまた貴方そんな怖い顔をしてわたしの顔ばっかり見ていらっしゃるん?」
と家内は震えながらも、怪訝そうに私の顔を覗き込みましたが、その拍子に何を私の眼の中に見たものか、
「キャッ!」
と叫ぶと憑かれたように私を振りもぎって母屋のほうへ逃げ出しました。そして今の家内の叫びに驚いたのでしょう。茫然と突っ立っている私の耳にも、店の方から番頭や小僧たちのどやどやと駈け出して来る跫音が聞こえてきたのでございます。
四
騒ぎは一時に大きくなりました。そして困ったことには妻はもう私さえも恐ろしがって、私が側へ寄ると慌てて父や番頭の陰へ隠れるようにして飛び退きました。そしてこんな恐ろしい家には一刻もいることができないから、すぐに離縁を貰って家へ帰ると言うのでございます。
「莫迦なことを言いなされ! 昨日祝言がすんだばかりで何の理由があって家へ帰らせられる? 幽霊? 莫迦な! 幽霊が出るから家へ戻って来たと貴女は親許へ戻っていいなさる気か! 阿呆らしい! 家に幽霊が出るもんなら、なにも昨日や今日に来た貴女一人の眼には映らんわ。