Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
になったといううわさが、人から人へつたわって、朝から晩まで患者がたえず、今では博士も、ろくろくからだのやすまるひまとてもないのです。
「これじゃあんまり繁昌しすぎて、ちとありがためいわくのようだね」
と、夫人をかえりみて、悲鳴をあげられたくらいでした。
いま看護婦から、このふしぎな患者のしらせをうけられて、このへんの貧しい百姓たちのうちでも、ことにみすぼらしい老婆で、このビショビショ雨のふる晩に、単衣もので赤ン坊をおぶってきたときいては、じぶんのつかれも忘れて、心から気のどくに感じられました。
「よし、すぐにいくよ。……だいぶうすら寒いようだから、部屋をあたためておくように……」
「まァ、かわいそうに、そんなにぬれてるの?」
と、夫人も美しい眉をひそめました。
しかし、博士や夫人のこんなやさしい心づかいも、それはまだこの老婆をひと目も見ていられないからで、その老婆というのは、はたして博士夫婦が、これほど憐みをかけるにふさわしい人間だったのでしょうか?
ただ、老婆の正体を、するどい嗅覚で見やぶったらしい五郎丸だけが、つながれながらも、あいかわらず猛りたっているらしく、また家人に警戒をうながすように、しきりに遠ぼえしているのが夜のしずけさをやぶって、ぶきみにきこえてきました。