Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
奇怪な眠り
奇怪な眠り
「や、おまたせしました……」
と、博士は部屋にはいると、まず平松看護婦が記しておいたカルテをとりあげました。
熱三十八度二分。脈、百三十……。住所、東彼杵郡東戸松村字白上二二三番地。津田まさの孫よし子二歳。
「ほほう、これはたいへんだね……」
と博士は、カルテをながめて、びっくりされました。
博士がびっくりされたのは、赤ン坊の容体でもなければ、またこの老婆のことでもありません。じつはこの患者の住所が、あまりにも遠いのにおどろかれたのです。
この老婆のすんでる東戸松村というのは、博士のすんでいる上小路からでは、つづらおりの嶮岨な山道を、およそ八里くらいもはなれた山奥……おまけにその白上という部落は、佐賀県とのさかい、多良岳のふもとで、そんなところから、こんな老婆の足で、けわしい山坂をこえてきたのでしょうか?
「さ、拝見しましょうかね」
と回転椅子をまわして、老婆とまともに顔があったとたん、博士は、もういちど、目をみはらずにはいられませんでした。
なんというひどいやつれかたでしょう! やせてること、まるで骸骨のようです。そしてはだけた胸から、肋骨がひとつひとつ透いてみえて、さながら昔話にある安達ヶ原の鬼婆があらわれでてきたようです。