Japanische Klassiker mit Furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.400 Zeichen · 387 Bildschirme
もうこれまでと曲者もあきらめたのでしょう。だいぶいらだって、最後の切りこみと同時に、ドスンと馬に体あたりをひとつくらわし、そのまま闇にまぎれ、どこかへ退散してしまったようです。
「ご城代さま、おけがはござりませぬか?」
「ごぶじでこざりましたか?」
と、口々に、提灯の火をとりかこんだなかに、ドサッ! と重い物音と同時に、ヒヒィーン! と悲しげないななきをたてて、左近将監をのせたまま、馬はその場に横倒れにたおれてしまいました。あぶみをふんばって、わずかに落馬をまぬがれた将監が、
「おのおのがた、あかりを見せられい!」
と、さしよせられた提灯の光にてらしてみて、びっくりしたことには、ドスンとぶつかったひょうしに、曲者は馬の脇腹から下腹へかけて、ななめにするどい爪をたてたとみえて、無残にも馬は内臓をそこに露出して、血潮をあふれさせながら、断末魔のあえぎをつづけているのです。
馬上の左近将監めがけて、とびあがって斬りつけると同時に、馬の下腹をひきさいたそのはやわざにも、舌をまきますが、もっとおどろくのは、そのひきさいたのが、刀や短刀のような刃ものではなく、まるでするどいけだものの爪ででもひきさいたような跡のあることでした。