Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

みちくさ

道草

夏目 漱石

Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme

Aozora Bunko

五十一

「貴夫?」

彼女の声は細くかつ長かった。彼女は微笑しかけた。しかしまだ緊張している健三の顔を認めた時、彼女はその笑を止めた。

「あの人はもう帰ったの」

「うん」

二人はしばらく黙っていた。細君はまた頸を曲げて、傍に寐ている子供の方を見た。

「能く寐ているのね」

子供は一つ床の中に小さな枕を並べてすやすや寐ていた。

健三は細君の額の上に自分の右の手を載せた。

「水で頭でも冷して遣ろうか」

「いいえ、もう好ござんす」

「大丈夫かい」

「ええ」

「本当に大丈夫かい」

「ええ。貴夫ももう御休みなさい」

「己はまだ寐る訳に行かないよ」

健三はもう一遍書斎へ入って静かな夜を一人更かさなければならなかった。

五十一

彼の眼が冴えている割に彼の頭は澄み渡らなかった。彼は思索の綱を中断された人のように、考察の進路を遮ぎる霧の中で苦しんだ。

彼は明日の朝多くの人より一段高い所に立たなければならない憐れな自分の姿を想い見た。その憐れな自分の顔を熱心に見詰めたり、または不得意な自分のいう事を真面目に筆記したりする青年に対して済まない気がした。自分の虚栄心や自尊心を傷けるのも、それらを超越する事の出来ない彼には大きな苦痛であった。