Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
五十二
そうして濁りながら動いているような彼の頭を、静かな夜の支配に任せた。夜はその濁りを清めてくれるには余りに暗過ぎた、しかし騒がしいその動きを止めるには充分静かであった。
翌朝彼は自分の名を呼ぶ細君の声で眼を覚ました。
「貴夫もう時間ですよ」
まだ床を離れない細君は、手を延ばして彼の枕元から取った袂時計を眺めていた。下女が俎板の上で何か刻む音が台所の方で聞こえた。
「婢はもう起きてるのか」
「ええ。先刻起しに行ったんです」
細君は下女を起して置いてまた床の中に這入ったのである。健三はすぐ起き上がった。細君も同時に立った。
昨夜の事は二人ともまるで忘れたように何にもいわなかった。
五十二
二人は自分たちのこの態度に対して何の注意も省察も払わなかった。二人は二人に特有な因果関係を有っている事を冥々の裡に自覚していた。そうしてその因果関係が一切の他人には全く通じないのだという事も能く呑み込んでいた。だから事状を知らない第三者の眼に、自分たちがあるいは変に映りはしまいかという疑念さえ起さなかった。
健三は黙って外へ出て、例の通り仕事をした。しかしその仕事の真際中に彼は突然細君の病気を想像する事があった。