Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
「己が内所で島田に金を奪られたのを気の毒とでも思ったものかしら」
彼はこう考えた。しかし口へ出してその理由を彼女に訊き糺して見る事はしなかった。夫と同じ態度をついに失わずにいた彼女も、自ら進んで己れを説明する面倒を敢てしなかった。彼女の填補した金はかくして黙って受取られ、また黙って消費されてしまった。
その内細君の御腹が段々大きくなって来た。起居に重苦しそうな呼息をし始めた。気分も能く変化した。
「妾今度はことによると助からないかも知れませんよ」
彼女は時々何に感じてかこういって涙を流した。大抵は取り合わずにいる健三も、時として相手にさせられなければ済まなかった。
「何故だい」
「何故だかそう思われて仕方がないんですもの」
質問も説明もこれ以上には上る事の出来なかった言葉のうちに、ぼんやりした或ものが常に潜んでいた。その或ものは単純な言葉を伝わって、言葉の届かない遠い所へ消えて行った。鈴の音が鼓膜の及ばない幽かな世界に潜り込むように。
彼女は悪阻で死んだ健三の兄の細君の事を思い出した。そうして自分が長女を生む時に同じ病で苦しんだ昔と照し合せて見たりした。