Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.671 Zeichen · 252 Bildschirme
精力的で血の気の多い依右衛門が、この紫陽花のような女を、心から好きになったというのも、うなずかれないことではありません。
「それは何時のことで?」
「戌刻半過ぎ、亥刻(十時)近かったと思います。欄干にもたれて、憑かれたようにお月様を眺めて居るので、若しや風邪でも引いてはと思って、そっと私の羽織を肩へ掛けてやりました。それが悪かったのかも知れません――もっともその後でお新が見回りに来たそうですが、その時も何んの変りも無かったようで」
お通はやるせない姿でした。そのお通が半年も前から、誰ともわからぬ相手から、引っ切りなしに狙われて居ることは、八五郎を通して平次も聴いて居ります。
平次はそれを聴きながら、四方を念入りに調べました。縁側はひどく娘の血で汚されましたが、それは一応拭き清めたにしても、障子にも欄干にも、拭き切れない血が残って、昨夜の惨劇の痛々しさを物語って居るのです。
縁は町家並の三尺ですが、欄干は頑丈で木の香もまだ抜けて居りません、それが東から南に回って、お照の刺されたのは、丁度その角のあたりになって居ります。
下を覗くと庇は案外狭く、庭は板塀の陽陰でジメジメして居りますが、それでも五、六坪位はあるでしょう。