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Japanische Klassiker mit Furigana

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かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme

Aozora Bunko

「ところが、おら、昼間は来られねえんだよ。後生だから内証でおっ母あの病室へ連れて行ってくんねえか。え、おじさん」

老小使の眼は十分な疑いをもってトム公の挙動を調べ始めた。彼の頭脳は「自転車お玉」を捕縛するために奔命する武藤刑事と同じように働いて来た。

「ちょっと訊くがお前――一体どこからここへはいって来たのか」

「裏門から」

「裏門も閉まっているはずだが」

「からたちの垣を越えて」

「ふーむ」と老爺はいかめしい顔をして、「これまでにして病院へはいって来るというのは、何か事情があるんじゃないか。その会いたいという病人は何号室の患者だね」

「三階の十九号室。――そこに、相沢町字和蘭陀横丁の千坂桐代っていう人がはいっているだろう。盲目で、女の……」

「はいっている。十九号は伝染病隔離室だから腸チフス患者だな。それがおまえのおふくろか」

「あ」

「名前は」

「おれのかい?」

「そうさ」

「かんかん虫のトムっていうんだ」

「トム? ……混血児かい」

「馬鹿にすんねえ!」

トムは純粋な日本語を飛ばして、口元まで吸い切った煙草を火の中へ抛った。紙パイプの蝋が彼のたんかの如く罪のない焔をぱっと上げた。