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Japanische Klassiker mit Furigana

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かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme

Aozora Bunko

私服

上甲板は、喧々囂々とした。

トム公は、木靴を脱いだ。

「なにを騒いでやがンでい」

彼のすがたが、栗鼠みたいに帆柱へ駈け登ってゆくと、彼を知る彼の仲間のかんかん虫たちは、こぞって拍手と歓呼を下から送った。

「プリンス!」

「うまくやれ」

「一割取ってやるぞ」

「一割じゃ承知できねえ」

ワーッ、という動揺めきに、上甲板の醜い喧噪は、一時に押し黙って、眸を吊り、眉をひそめ、生唾をのんだ。

トム公は、太陽の中にいた。

私服

帆柱の上から堅パンが落ちて来た。トム公は敬礼していた。群集にしたのではない、猿に。

猿は、白い歯を与えたのみで、敬礼を忌避した。トム公は、帆柱へ足を巻いて、また一枚堅パンを出した。

半分は自分が食った。

半分は、彼が抱えて行った子猿に食わした。彼は、再び、親猿に敬礼した。

万雷のような歓呼の中へ、トム公は、二匹の猿を連れて辷り落ちて来た。――甲板へつくと同時に、彼はくろんぼの波に胴上げされて、狂的に手から手へ送迎された。

猿も、オペラバッグもたちまちどこかへ素っ飛んでしまった。船はいつのまにか、船渠の地上から十尺も高く泛かび出している。職長の指揮笛が、両舷のワイヤロープへあわただしく鳴っている。