Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
お馬車
「私服が来ている」
そんな囁きが、伝わった。
「私服、どうしたってんだい」
トム公は、反抗的に、前の者をグイグイ押した。すると、彼の前に立っていた髯の亀田が、
「ちょっと、君」
と、私服に引っ張り出された。
「なんですか」
「まあ、いい、こっちへ来い」
背中を小突かれて、守衛部屋へはいって行った。
お馬車
トム公は、驚いた。
「開けてくれ、おじさん」
木靴の先で、守衛部屋の戸を蹴った。
「おまえに用はない」
会社の守衛は、彼をつまみ出そうとした。
「こっちで用があるんだ」
彼は、中へとびこんだ。
先刻の夫人と令嬢がびっくりして、卓から立った。オペラバッグが、彼女と刑事の間にあった。
刑事は、彼女たちを、眼でかばいながら、
「なんだおまえは」
「かんかん虫のトム」
「何しにはいって来た!」
「おれの連れだよ、その人は。一緒に帰るんだ」
「これは泥棒だ」
「冗談じゃない……」
「――奥様」
刑事は、体を横に反らした。
「ご紛失の腕輪は、これでしょうな」
白金台の金剛石の環が、燦然と、卓の上におかれた。
「え、これですの! ……まあ、よかったわねえ、奈都子さん」
「ほんとにネ」
「ほかに、まだ何か、あったように伺いましたが」