Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
時の心臓
「競馬? そうだ! 根岸の競馬へ行きゃ、きっと、石炭屋の高瀬とあのおんなたちが来ているぜ!」
時の心臓
あれから幾日か経って、広東服のお光さんはまた、嬌然と宝石を噛んでいるような明るい歯を笑まして、屋上の時計塔が、薄暮の空に午後四時の指針を示している柳田商会の店へはいって来た。
店の、うす暗い金庫と事務卓の隅に、赤い笠の電気を捻って、何かカード様の無数の紙片をならべて他念なく見入っていた柳田老人は、南京靴の軽いステップに驚いたような顔を上げて、
「おや、来たのかい」
と、あわてて卓上のカードを取りまとめて、手の下にかくした。
お光さんは、腰をおろすとすぐに、それを彼の手の下からるように引っ奪くって、四、五枚、ペラペラと見ては剥くり返して、
「いやなお狒々さんね、昼間からこんな物ばかり見ているのよ。店員たちに見られたらきまりが悪くなくって?」
と、唾を吐くように言いながら、お光さんもまた、それを離そうとはせずに、つい同じ物を何度も繰り返しては眺め入ってしまうのだった。
「いいじゃないか、何もこれは、わしの蒐集だからな。趣味だよ」
と、老人は、どうせ見られたからには、という風に、隠していたあとのカードまで、みんな彼女の手へ公開してしまった。