Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
それを打消すように、今村や樫井たちは、
「大丈夫、大丈夫、トム公はきっと独りで逃げて来るよ」と、言った。
「いいえ」
お光さんは争った。
「こんどはそうは行くまいよ、警察でも要心をしているからね。それに、私たちが義憤して起ったのも、いわばトム公が中心じゃないか。そのトムが捕まってどうなるかわからないというのに競馬場へ来ていちゃ私は気がすまない。諸君はどう思うこと?」
「どうって?」
「この競馬場へはいるつもり? それとも、これから引っ返してトムを奪取するつもりなの?」
「だからその点ならば、彼奴が自発的に逃げ出して来ると思うんです」
「だって、もし逃げられなかったら?」
「それや、やむを得ないことになる」
「とすれば、プリンスを見殺しにするッてもんじゃないこと。私は行くわよ、諸君――」
お光さんとしては稀に見るヒステリカルな投げ言葉である。みんなへ、そう言って、くるりっと、南京靴の踵を廻して二、三歩弾みかけると、そこへ、時間に遅れたので急いで来たのであろう、轍を躍らして切符売場の前へ駈けつけて来た二頭立ての馬車があった。
「あぶない」
と馭者は、馭者台の上から、お光さんへ呶鳴った。