Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
「え、右の脚を折ったから起てないわ、どうしてくださるの」
「大げさなことを言うな、脚を折ったものがそんな真似をしていられるか。ふてえ女だ、強請だな、てめえは」
「君! わたしをゆすりだと言ったわネ」
この、君! にたいがいな馭者は毒ッ気を抜かれるし、またそのうちには人だかりがするので、車上の者が紳商貴顕のたぐいである場合には、必ず馭者を呼んで、金貨か紙幣をそっと握らせて囁くに決まっている。
いつもの例である――とお光さんの折れもしない脚に、相手が薬でもない金貨をそッと塗りつけようとすると、俄然と起って、その金貨か紙幣かを投げ返して、車上の貴紳を罵倒して去るのを遊びとするのであったが、きょうの馬車からはいつまでも反応がなかった。
馭者は、彼女の悪戯と知って、かんかんに怒る。
彼女は応酬する。
愚連隊たちは面白がって成行きを見ていた。
そのうちに、後から後から競馬場へ来る二人曳きの腕車や馬車がれきろくとしてつづき、そしてたちまち、停滞車に道を塞がれて百足虫のように止まった。――お光さんは平然としてうごかない。折れたと称する脚をかかえて、屈みこんだまま地上を離れない。