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Japanische Klassiker mit Furigana

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かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme

Aozora Bunko

すると、その洋館と日本座敷とをつないでいる橋廊下の上にぼんやりと、海をながめている雛妓のすがたがあった。トム公の影はすぐに隠れていた。

雛妓の影もそこから消えた。

いつのまにか、二人の影はひとつになって、海の方へ斜めになっている芝生の蔭にかがみ込んでいた。それは豆菊だった。

「兄さん、おっ母さんは、どうしたでしょうね」

「あれっきりだよ。おら、ゆうべの晩、西戸部から逃げ出して来たばかりだから、まだ行って見る暇がねえのさ」

「もう行っちゃいやよ、兄さん……」

「どこへ」

「おっ母さんの病院へ」

「自分のおっ母あのところへ行くのに、どうして悪い?」

「あそこには刑事さんが来ていて、兄さんが行ったらすぐ捕まえられてよ。もしおっ母さんの耳にはいったら、その心配だけでも、きっとおっ母さんは……」

と、袂を顔に当てると、掴み細工の花櫛が、前髪からふるえて落ちた。

「冷たい手をしているなあ」

「行っちゃいやよ、兄さん」

「じゃ、止すよ。……冷たい手だなあ、菊ちゃん、おめえ子供のくせに、どうしてこんな冷やッこい手をしているんだい」

「どうしてだか、分らないわ」

「陽あたりへ出ると、消えちまいそうだな。