Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
その心もちが分ったので、女将はまたせかせかと警察へ電話をかけた。話がついたと言って、急に馬車をいいつけて、豆菊も加えて、四人づれで伊勢佐木署へ出頭した。
県庁との打合せに、さんざ手間がかかったらしいが、トム公はそこにいること二時間ばかりで、一同へ下げ渡された。馬車はまた一人の客を容れて、そこから山の手へ向って鞭を打った。
「分っている? 赤十字病院だよ」
「分っています」
「いそいでおくれネ」
女将は、こんなうれしい日はないと言って、涙をふいた。まったく、うれしそうだった。
豆菊が、お下げ髪に結って、きちんと、銘仙の袂を膝に重ねているので、トム公は、ぎごちなかった。髯の生えているそばの人、紋付袴で謹厳そのものといった態度でいるそばの老人、それも、鬱陶しいものだった。
ただし彼は、こうして公然と、母のいる病院へ訪れ得ることがとても愉快であった。一刻もはやく、冷たいだろうと思う母の手を、自分の頬ぺたに当ててやりたかった。
馬車はかなりの歩速で躍ッていたが、馭者の鞭の数がまだ少ない気がした。黙っているお菊ちゃんだってやっぱり同じだろうと思った。彼は、妹の眼にいっぱいうるんでいるものを見て、共に、目を熱くしている自分に気づいた。