Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
「もう、くさくさしちまう。いくら店の為になるったって、毛唐のお客は、たくさんだわ」
「…………」
うすい髪の毛に、ていねいに櫛の歯をとおしている、脂肪性赤鼻質の彼女の主人の、高瀬理平は、ちらっと、新聞紙から額ごしに彼女をながめたが、また、黙ってしまった。
「あなた」
「ム?」
「わたし、きょう、千歳へお供するのは、ごめん蒙りたいわ」
「なぜエ?」
「なぜって……」
「いかんわえ、そんなこたあ。ゆうべのもだいじなお客筋だが、きょうのは、なお大事なんじゃ。千歳の方をひきあげさせて、ぜひ、わしの本牧の別宅へお連れ申さにゃならん。そういうことは、女の交際術で、上手にやるのが役目だ。またお前が、そういう方にかけては、諸事抜け目がない奴と思えばこそ、家へ入れたのだからな。でなければ、以前のように、金春の姐さんに帰るか、日蔭者になって、猫でも対手にするがええ」
「まったく、今になって、大後悔だわ。妾といわれても、尾上町に別になっていた方がよッぽどよかった」
「ば、ばか!」
「でも、ここへ来て、夫人といえばおていさいはいいけれど、しょッ中、異人のお相手ですもの。――まるでチャブ屋の女将だわ」