Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
トム公の返辞は、元気がなかった。六畳一室の闇の中には、なんにも、食物のにおいがなかった。
「おっ母あ、ご飯を食べたのかい、今夜は」
「食べたよ――お民さんのお家から、また一合、拝借してネ」
「じゃ、もう何合も借りができたんだな。今に、倍にして、返してやるよ」
「お民さんは、親切だから、まだほかに、砂糖だのお醤油だの、お野菜まで」
「アア分ったよ、今に、みんなお礼するよ」
「おまえ、ご飯は」
「おら、眠たいヨ」
畳をなで廻す手が、トム公のからだへ探り寄った。そして、その重いからだを、乳呑み児のように抱いて、自分の寝ていたうすい夜具の中へかかえ入れた。トム公は、眼をあいていながら、母のなすがままに、甘えていた。
「おまえ、きょうも仕事に行かなかったの」
「仕事どこじゃないもの」
「悪いことをして歩くのは、やめておくれ。ネ……おっ母さんが、ひとりで、こうしていても、どんなに、心配だか。……分るだろう、おまえにも」
「おら、悪いことなんか、した覚えはねえ」
「だって、おまえは、愚連隊だって、言われているよ」
「誰に」
「警察の人に」
「警察のやつなんか、こっちの味方じゃないもの」
「小さな者のクセにして、そんなことを言うから、悪者に間違われるんですよ」