Japanische Klassiker mit Furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Lesen Sie かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.006 Zeichen · 182 Bildschirme
「オイ、逃げると、手荒くなるぞ」
「何も逃げやしない」
黒眼鏡もすこし度胸をすえたように、その手を突ッ放して、お光さんの方へ迫った。
「ご婦人!」
「なあに」
「君はきのう柳田商会にいた娘さんじゃないのか」
「そうよ、覚えているわね」
「なんだって、無頼者を使嗾して僕をこんな所へ引っぱって来たんですか。君たちは白昼に追剥でもやろうっていうのか」
「…………」
お光さんは、相手にならないで、笑いながら墓地の鎖を跨いだ。そして、大きな菩提樹の下から振りかえって、
「諸君、こっちへ連れておいでよ、その黒眼鏡を――」
ここへ来ると、愚連隊たちは、急に黒眼鏡を罪人のように小突き廻した。彼は、墓地の上へ追いあげられて、菩提樹の下に起立を命じられた。言うがままにしなければ、その度ごとに、拳骨が来るのだった。
「誰も来やしまいな」
と、今村がきょろきょろした。
「だいじょうぶだよ」お光さんが言った。
「今ね、墓番の若夫婦にたのんでおいたから……」
「誰か寝てるぜ、あんな所に」
「どれ?」
今村の指さす所へ、みんな鋭い目を向けた。墓と墓とのあいだに、ひとりの清国人が、新聞紙を敷いて昼寝をしている。