Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(八) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.604 Zeichen · 391 Bildschirme
ところが、陳倉の道に入ると、途々の部落は例外なく焼き払われていて、籾一俵鶏一羽獲られなかった。
「これも孔明の周到な手まわしとみゆる。心憎い用意ではある」と語らい合って、なお数日を進むうちに、一日、司馬懿は突然、曹真や劉曄にこう云い出した。
「これから先へは、もう絶対に進軍してはなりませぬ。昨夜、天文を案じてみるに、どうも近いうちに大雨が来そうです」
「そうかなあ?」
曹真も劉曄も疑うような顔をしていたが、司馬懿仲達の言であるし、万一のことも考慮して、その日から前進を見あわせた。
竹木を伐って、急ごしらえの仮屋を作り、十数日ほど滞陣していると、果たして、きょうも雨、次の日も雨、明けても暮れても、雨ばかりの日がつづいた。
その雨量も驚かれるばかりである。車軸を流すという形容もおろか、馬も流され人も漂い、軍器も食糧もみな水漬いてしまう。いや仮屋もたちまち水中に没し、山の上へ上へと移って行った。
しかも、道も激流となり、絶壁も滝となり、谷を覗けば谷も湖と化している。ほとんど、夜も眠れない有様である。
こうした大雨が三十余日もひっきりなしに続いた。病人溺死者は続出し、食糧は途絶え、後方への連絡もつかず、四十万の軍馬はここに水ぶくれとなってしまいそうであった。